感動的なホタルの舞いを写せたらどんなに素晴らしいことでしょう。
私達アマチュアカメラマンでも写せますか?
デジタルカメラでも写せますか?
携帯では?
そんな問い合わせが多数寄せられております。今回プロカメラマン、
西川佑介
さんにご登場願い、皆さまの質問に答えていただきました。
是非ご参考になさって下さい。
「西川佑介さんのプロフイール」
1965年 東京生まれ
1988年 日本大学芸術学部写真学科卒業
国内外のニュースやスポーツ取材を行うかたわら、1994年から日本各地のホタルを撮り続けている。
日本写真家協会員。NPOホタルの会顧問。
以下は、西川さんのご寄稿です。
先ず、これだけは守っていただきたいことがあります。
「ホタルの棲息地の中にズカズカと入っていかない」
当然のことです。ホタルの棲息する環境が踏み荒されるだけではなく、土手が崩れて川に落ちたり、田んぼの畦道が崩れたりして地域住民に多大な迷惑をかけてしまいます。ホタル観賞は地域住民の協力があってはじめて成り立ちますので、このような行動は慎みましょう。
また、水辺近くにはヘビがいたりして噛まれたら大変危険です。実際、昼間に撮影地の下見をしにホタルのよくいそうな小川を歩いていると、いろいろな種類のヘビを見かけます。私は、夜間にヘビを見たことはありませんが、それは暗くて気が付かないだけです。むやみに地面近くに手を出したりすることはやめましょう。
先ず、ホタルの乱舞している光景を風景的に撮る場合、基本的には三脚にカメラを固定し、長時間露光することになります。三脚はしっかりした中型以上の物を選びましょう。
参考までに、私の場合、ハスキーのハイボーイを愛用し、ローアングル用にスリックのマスタースポーツを用意しています。
ホタルの乱舞は、夜7時から8時過ぎにピークをむかえますが、撮影の準備として午後5時の明るいうちに、撮影場所を決めておきます。三脚にカメラをセットし、フレーミングを決めます。この時のピント位置は、ホタルの乱舞しそうな場所にある大きな岩や木にピントを合わせておくと、シャープな画質に見えます。レンズ絞りは f2.8 か f4 。感度はISO 400 です。
6月中旬頃だと、午後7時前後には夕焼け雲が群青色に変っていく頃です。
薄暗くなった小川のほとりの草の根本から、ホタルが少しずつ点滅をはじめます。最初の1匹目が飛び上がったのをきっかけに他の点滅していたホタルもいっせいに舞い上がり始めます。この時に最初の1枚目のシャッターを切ります。
露光時間は、目安として約4分(f2.8)から4分30秒(f4)です。立て続けに2枚目のシャッターを切ります。
2枚目の露光中は、1枚目の時よりもだいぶ暗くはなってきていますが、まだ川の流れを目視することが出来ます。山と空の境界線もはっきりしていると思います。露光時間は、8分30秒(f2.8)から9分(f4)です。
さらに3枚目のシャッターを切ります。だいぶ暗くなってきていますが、川の流れはうっすらと目視できます。露光時間は10分です。
3枚目を撮り終わった時には、もう真っ暗になっていると思います。4枚目以降からは、露光時間10分です。
ハッセルブラッド 503CX
《 撮影データ 》
場所
:
長野県上伊那郡辰野町
カメラ
:
ハッセルブラッド503CX
レンズ
:
プラナー80ミリ f2.8
絞り
:
f2.8
シャッター
:
10分
感度
:
ISO 400
フイルム
:
フジカラープロビア 400
仕上がった写真は、川の水の流れや土手の草が薄暗い中に見えていて、全体的にダークブルーのなかでホタルが乱舞している光景が撮れていると思います。
ホタル写真の勝負は、最初の3枚で決まります。
4枚目以降のコマはホタルの乱舞は写っているものの風景は暗くつぶれ、遠くの街の明かりの影響でグリーン被りになると思います。
あと、長時間露光の注意点として相反則不軌(長時間露光での感度低下)があります。フィルムによっても異なりますが、長時間露光になると感度が曖昧になり、厳密な露光計算が出来なくなります。上記の露光時間を基本にし、実際の撮影では、夕方の天気が晴れか曇りで若干の露光時間の調整が必要ですし、3枚目以降の写真でも月のあるなし、月の満ち欠けでも露光時間の調整が必要です。
これはもう経験や長年のカンとしか言いようがありません。
基本的には、フイルムカメラと同じ撮影方法ですが、違いとして
(1)長時間露光のノイズの問題
(2)相反則不軌が無い
があります。一眼レフ・デジタルカメラの個々の性能によりますが、ノイズに関しては、セッティングでノイズキャンセラーを作動させたり、撮影後の画像処理でノイズを消したりすることが必要になります。
露光時間については、フィルムと違って相反則不軌が無いため、同じ撮影感度でもデジタルカメラのほうが露光時間が短くなります。
ホタルの撮影に行く前に、自宅近くで夕方の試し撮影を行い、自分の意図する露光時間を決めておいたほうが良いでしょう。
実際のホタル撮影では、試し撮影で決めた露光時間をRAWデータで撮影し、画像現像処理で色調を決めていきます。
あと、人によっては1分の露光時間で連続して撮影し、それを画像処理で重ね合わせていって、好みの露光時間分の写真に仕上げる方法もあるそうです。
《 撮影データ 》
場所
:
長野県上伊那郡辰野町
カメラ
:
リンホフマスターテヒニカ
レンズ
:
スーパーアンギュロン90ミ f5.6
絞り
:
f5.6
シャッター
:
10分
感度
:
ISO 400
フイルム
:
フジカラープロビア 400
三脚・長時間撮影が必要なため、携帯電話やコンパクトカメラでは満足な写真を撮る事は難しいです。
無理に撮っても自動でストロボが光ったり、携帯電話の画面の明かりが周囲に迷惑をかけてしまいますので、やめましょう。
有名なホタル観光地には、毎年多くの観光客が訪れます。
せっかく良い写真を撮りたいと思っても、長時間露光中に三脚を他人に動かされたり、コンパクトカメラのストロボや懐中電灯の明かり、自動車のヘッドライトが画面に入ってしまうということが度々あります。
無用なトラブルを避けるために、先ず、土・日曜日の撮影は極力避けたほうが良いでしょう。
また、ホタルの有名な観賞地でも地元の人と仲良くなれば、あまり人に知られていない秘密の撮影スポットをコッソリ教えてもらえたりもします。
私の場合、撮影時のゴミは出さないのが常識ですが、昼間の下見の時に川や土手に落ちている空缶やペットボトル、ビニール袋などのゴミ掃除したりします。地元の人に喜ばれるだけではなく、自分が撮った写真にゴミが写り込むのを防ぐ意味もあります。
皆さま、素晴らしいホタルの写真をゲットされたら、是非当会へお送り下さい。私のコメントを添えて、ホームペ―ジで紹介させていただきます。
それでは頑張って良いホタル写真を撮って下さい。お待ちしております。
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